メタデータと図書目録

Dublin Coreと目録規則の比較

望月 沙織
1 はじめに
 図書館においては、欲しい図書・資料などを探すためには図書館の所蔵目録が利用されている。図書館の所蔵目録には、その図書館が所蔵しているすべての資料について、どこに、どんな資料が存在しているのかが示されている。この目録は、目録規則に従って図書館員という専門家が作成している。
 一方、WWW(World Wide Web)のようなコンピュータネットワークにおいて、図書館の所蔵目録のような情報を探すために利用されるメタデータというものがある。WWW上で提供されたり、発信されている情報は多種多様である。たとえば、図書館情報学に関する情報を探すとしても、学術文献や機関・団体のホームページ、講演会の紹介などがあり、情報の量だけでなくその内容についてもさまざまである。そのため、多種多様な情報の中から自分の目的に合った情報を見つけだすためには、その情報がどんな情報であるのか、どこにその情報があるのかということを示すメタデータが必要となる。メタデータについては、現在Dublin Core(ダブリン・コア)と呼ばれるWWW上の文書のためのメタデータ記述方法が国際的に検討されている。

 図書目録もメタデータも、情報資源についての記述を記すものであり、情報を探し出すために利用されている。しかし、その誕生した背景や時期、記述対象などの違いによりそれぞれがそれぞれの記述規則によって処理されている。そこで、本稿では、メタデータと図書目録はどのように違うのか、またそれぞれの特徴はどういったものかを知るために、それぞれの記述項目、記述形式を中心に比較、分析を行う。
 

2 メタデータと図書目録について

2.1 メタデータとは
 メタデータは、「データに関する構造化されたデータ(Structured Data about Data)と定義される。つまり、データを理解しやすくするための文書化された情報であると考えられる。
 メタデータは、WWW上において実際に作成され、利用されている。しかし、このメタデータの記述方法については、分野などの違いからさまざまな種類のものがある。あらゆる情報が共存しているWWW上において、情報資源の記述方法がいくつもあるということは、いろいろな分野からの情報を探し出すことへの大きな障害となる。メタデータ間で自由に交換がなされるようになれば、欲しい情報だけでなくそれに関連するより多くの情報を探し出すことができる。WWW上において、複数の情報資源にアクセスできるようにするためには、メタデータを統合的に利用できることが必要とされる。そこで、さまざまな情報資源から分野に関わらない共通する基本的なメタデータの要素をまとめ、記述するということが考え出された。これが、「Dublin Core」である。

2.2 Dublin Coreとは
 Dublin Coreは、1995年にオハイオ(Ohio)州ダブリン(Dublin)にあるOCLC(Online Computer Libray Center)で開催されたワークショップで提案されたものである。このときは、13項目の基本エレメントによるメタデータの記述が提案された。その後、1996年のワークショップで15項目のエレメントが提案され、現在その標準化が進められている。
 Dublin Coreは、インターネットのような巨大な情報空間において、分野を越えて情報資源を探し出すという要求のために開発されたメタデータの記述である。さまざまな分野のメタデータの記述項目を、統一したものにしようというものである。コア(core)と呼ばれる基本的な記述要素を決め、分野によらない共通したメタデータを作成することを目的としている。また、Dublin Coreは、WWW上の著者が自分でメタデータを作成することができるためのメタデータの記述である。
 Dublin Coreの15項目のエレメントとその説明を以下に記す。
 

Dublin Coreの基本エレメントとその説明

(1)タイトル(Title):情報資源の名前。
(2)著者あるいは作者(Creator):情報資源の内容に関して責任を持つ人または組織。
(3)主題およびキーワード(Subject):情報資源の主題とキーワード。
(4)内容記述(Description):文章による情報資源の内容説明。
(5)公開者(出版者)(Publisher):情報資源を現在の形態にした組織(出版社、大学など)。
(6)寄与者(Contributor):著者ではないが文書の内容の作成に関わった人また組織(編集者や翻訳者等)。
(7)日付(Date):現在の形で利用できるようになった日付。
(8)資源タイプ(Type):ホームページ、小説、詩、辞書といった、情報資源の型。
(9)形式(Format):情報資源のデータ形式。
(10)資源識別子(Identifier):情報資源を一意に識別するための番号あるいは名前。
(11)情報源(出処)(Source):情報資源の出所となった情報資源を一意に示す番号もしくは文字列。
(12)言語(Language):情報資源の内容を記述している言語。
(13)関係(Relation):他の情報資源との関連付け。
(14)対象範囲(空間的・時間的)(Coverage):地理的場所や時間的な内容に関する情報資源の特性。
(15)権利管理(Rights):著作権記述などの権利に関する記述や利用条件に関する記述へのリンク(URLもしくは何らかのURI)。
 

2.3 図書目録とは
 図書目録は、印刷本での情報資源の情報を記したものであって、WWW上におけるメタデータと同じ役割を果たすものである。本稿では、NCR(日本目録規則87年版)とAACR2(英米目録規則第2版)の図書、逐次刊行物を比較の対象として用いた。以下にこれらの記述事項を記す。

NCR図書の記述事項

 タイトルと責任表示に関する事項
  (1)本タイトル
  (2)並列タイトル
  (3)タイトル関連情報
  (4)責任表示
 版に関する事項
  (1)版表示
  (2)特定の版にのみ関係する責任表示
  (3)付加的版表示
  (4)付加的版にのみ関係する責任表示
 出版・頒布等に関する事項
  (1)出版地・頒布地等
  (2)出版者・頒布者等
  (3)出版年・頒布年等
  (4)製作項目
 形態に関する事項
  (1)ページ数、図版数等
  (2)挿図、肖像、地図等
  (3)大きさ
  (4)付属資料
 シリーズに関する事項
  (1)本シリーズ名
  (2)並列シリーズ名
  (3)シリーズ名関連情報
  (4)シリーズに関する責任表示
  (5)シリーズISSN
  (6)シリーズ番号
  (7)下位シリーズの書誌的事項
 ISBN、入手条件に関する事項
  (1)ISBN
  (2)入手条件・定価
 

NCR逐次刊行物の記述事項
 
 タイトルと責任表示に関する事項
  (1)本タイトル
  (2)資料種別
  (3)並列タイトル
  (4)タイトル関連情報
  (5)責任表示
 版に関する事項
  (1)版表示
  (2)特定の版にのみ関係する責任表示
  (3)付加的版表示
  (4)付加的版にのみ関係する責任表示
 巻次、年月次に関する事項
  (1)巻次
  (2)年月次
 出版・頒布等に関する事項
  (1)出版地・頒布地等
  (2)出版者・頒布者等
  (3)出版年・頒布年等
  (4)製作項目
 形態に関する事項
  (1)ページ数、図版数等
  (2)挿図、肖像、地図等
  (3)大きさ
  (4)付属資料
 シリーズに関する事項
  (1)本シリーズ名
  (2)並列シリーズ名
  (3)シリーズ名関連情報
  (4)シリーズに関する責任表示
  (5)シリーズISSN
  (6)シリーズ番号
  (7)下位シリーズの書誌的事項
 ISBN、入手条件に関する事項
  (1)ISBN
  (2)キイ・タイトル
  (3)入手条件・定価
 

AACR2図書の記述事項

 タイトルと責任表示エリア
  (1)本タイトル
  (2)資料種別
  (3)並列タイトル
  (4)タイトル関連情報
  (5)責任表示
 版エリア
  (1)版表示
  (2)版に関連する責任表示
  (3)副次的版表示
  (4)副次的版表示に関連する責任表示
 出版・頒布などのエリア
  (1)出版地・頒布地など
  (2)出版者名・頒布者名など
  (3)頒布者の役割表示
  (4)出版年、頒布年など
  (5)印刷地、印刷者名、印刷年
 形態的記述エリア
  (1)冊数およびページ数
  (2)挿図類
  (3)大きさ
  (4)付属資料
 シリーズエリア
  (1)シリーズの本タイトル
  (2)シリーズの並列タイトル
  (3)シリーズのタイトル関連情報
  (4)シリーズに関連する責任表示
  (5)シリーズのISSN
  (6)シリーズ番号
  (7)サブシリーズ
  (8)2以上のシリーズ表示
 標準番号と入手条件
  (1)ISBN
  (2)入手条件
 

AACR2逐次刊行物うの記述事項

 タイトルと責任表示エリア
  (1)本タイトル
  (3)並列タイトル
  (4)タイトル関連情報
  (5)責任表示
 版エリア
  (1)版表示
  (2)版に関連する責任表示
  (3)副次的版表示
  (4)副次的版表示に関連する責任表示
 数字、およびアルファベット、年月次、またはその他の表示エリア
  (1)数字およびアルファベットによる表示
  (2)年月次による表示
  (3)初号に表示のないもの
  (4)複数の表示方式
  (5)完結した逐次刊行物
  (6)後続の表示
 出版・頒布などのエリア
  (1)出版地・頒布地など
  (2)出版者名・頒布者名など
  (3)頒布者の役割表示
  (4)出版年、頒布年など
  (5)製作地、製作者名、製作年
 形態的記述エリア
  (1)資料の数量
  (2)大きさ
  (3)付属資料
 シリーズエリア
  (1)シリーズの本タイトル
  (2)シリーズの並列タイトル
  (3)シリーズのタイトル関連情報
  (4)シリーズに関連する責任表示
  (5)シリーズのISSN
  (6)シリーズ番号
  (7)サブシリーズ
  (8)2以上のシリーズ表示
 標準番号と入手条件
  (1)ISSN
  (2)キイ・タイトル
  (3)入手条件
 
 
 

3 メタデータと図書目録の記述項目の比較
 メタデータと図書目録を比較するために、まずそれぞれの記述項目の対応関係を表で表した。記述項目は、情報資源についてのさまざまな情報を示すもの、つまりその情報源を表すものであることから、記述項目を比較することでメタデータと図書目録の違いを知ることができるのではないだろうか。そして、ただ記述項目を比較するだけでなく、その相違を表として表した方がよりわかりやすく、より違いが明らかになるのではないかと考えたからである。以下に、その表を示す(表1)。
 

表1 記述項目の対応
 
 
    Dublin Core    NCR(図書)  NCR(逐次刊行物)   AACR2(図書)  AACR2(逐次刊行物)
 タイトル(Title)  本タイトル  本タイトル  本タイトル  本タイトル
   資料種別  資料種別
 並列タイトル  並列タイトル  並列タイトル  並列タイトル
 タイトル関連情報  タイトル関連情報  タイトル関連情報  タイトル関連情報
 著者あるいは作者
(Creator)
 責任表示   責任表示  責任表示  責任表示
主題及びキーワード
(Subject)
内容記述(Description)
版表示 版表示 版表示 版表示
寄与者(Contributor) 特定の版にのみ関係する責任表示 特定の版にのみ関係する責任表示 版に関連する責任表示 版に関連する責任表示
付加的版表示 付加的版表示 副次的版表示 副次的版表示
付加的版にのみ関係する責任表示 付加的版にのみ関係する責任表示 副次的版にのみ関係する責任表示 副次的版にのみ関係する責任表示
巻次 数字及び(または)アルファベットによる表示
年月次 年月次による表示
初号に表示のないもの
複数の表示方式
完結した逐次刊行物
後続の表示
出版地・頒布地等 出版地・頒布地等 出版地・頒布地など 出版地・頒布地など
公開者(Publisher) 出版者・頒布者等 出版者・頒布者等 出版者名・頒布者名など 出版者名・頒布者名など
日付(Date) 出版年・頒布年等 出版年・頒布年等 出版年・頒布年など 出版年・頒布年など
印刷地・印刷者・印刷年
製作項目(製作地・製作者・製作年) 製作項目 製作地・製作者名・製作年
ページ数、図版数等 特定資料種別と資料の数量 冊数及び(または)ページ数 資料の数量
挿図、肖像、地図 挿図類
大きさ 大きさ 大きさ
付属資料 付属資料 付属資料 付属資料
本シリーズ名 本シリーズ名 シリーズの本タイトル シリーズの本タイトル
並列シリーズ名 並列シリーズ名 シリーズの本タイトル シリーズの本タイトル
シリーズ名関連情報 シリーズ名関連情報 シリーズのタイトル関連情報 シリーズの関連情報
シリーズに関係する責任表示 シリーズに関係する責任表示 シリーズに関連する責任表示 シリーズに関連する責任表示
シリーズのISNN シリーズのISNN シリーズのISNN シリーズのISNN
下位シリーズの書誌的事項 下位シリーズの書誌的事項 サブシリーズ サブシリーズ
2以上のシリーズ表示 2以上のシリーズ表示
資源識別子(Idetifier) ISBN ISBN ISBN ISNN
キイ・タイトル キイ・タイトル
入手条件 入手条件・定価 入手条件 入手条件
資源タイプ(Type)
形式(Format)
情報源(出処)
(Source)
言語(Language)
関係(Relation)
対象範囲(空間的・時間的)(Coverage)
権利管理(Rights)

 表の中には、ここで用いるDublin Core、NCR(日本目録規則)の図書と逐次刊行物、AACR2(英米目録規則第2版)の図書と逐次刊行物の記述項目を入れた(NCR、AACR2については、省略可能な項目は除いた)。空欄部分は、それに対応する項目がないことを示している。
 この表から、メタデータと図書目録の記述項目の違いを大きく3つに分析した。その3つとは、メタデータと図書目録に共通な記述項目、Dublin Coreに特有な記述項目、図書目録に特有な記述項目である。そして以下で、これらのことについてさらに比較、分析していく。

3.1 共通の記述項目の比較
 表から、Dublin Coreと図書目録に共通する記述項目は、「タイトル(Title)」と「本タイトル」、「著者あるいは作者(Creator)」と「責任表示」、「寄与者(Contributor)」と「特定の版にのみ関係する責任表示」、「公開者(Publisher)」と「出版者」、「日付(Date)」と「出版年」、「資源識別子(Identifier)」と「ISBN」の6つである。また、「主題及びキーワード(Subject)」で、それに対応するものが図書目録の記述項目の中にはないが、標目という形で目録に記入されることから、これも共通のものと考えられる。
 これらの記述項目は、情報検索の時によく利用されるものである。特に著者、タイトル、出版者、主題などは頻繁に利用されるであろう。また、これらの記述項目はさまざまな情報資源を同定するのにも必要な記述であると考えられる。それは、メタデータと図書目録に共通な記述項目はあらゆる出版物(ディジタル資料、本、雑誌など)に共通の記述項目であると考えられる。

3.2 Dublin Coreに特有な記述項目
 Dublin Coreに特有な記述項目は、表からも分かるように「内容記述(Description)」、「資源タイプ(Type)」、「形式(Format)」、「情報源(出処)(Source)」、「言語(Language)」、「関係(Relation)」、「対象範囲(空間的・時間的)(Coverage)」、「権利管理(Rights)」の9つであった。これらは図書目録には見られない記述項目であり、WWW上の情報資源、つまりディジタル資料の特徴を表していると考えられる。ここで、それぞれの項目についてどんな内容を記述するのか、さらに詳しく説明する。

内容記述(Description):
 情報資源の内容に関する説明記述である。たとえば、文書の場合の抄録や、視覚的資料の場合の内容記述などである。

資源タイプ(Type):
 情報資源の種類を示すものである。たとえば、ホームページ、小説、詩、ワーキングペーパー、テクニカルレポート、エッセイ、辞書、事典などがある。

形式(Format):
 情報資源のデータフォーマットについての記述である。情報資源を表示したり、動作させたりするのに必要なソフトウェアや場合によってはハードウェアを識別するために利用できる情報を記述する。

情報源(出処)(Source): 
 当該資料を作り出す元になった別の情報資源に関する情報である。一般に、それぞれの項目には記述対象である情報資源に関する情報のみを記述することが推奨されているが、この項目には当該情報資源を見つけ出すために有用である別の情報資源に関する作者、日付、形式、識別子、あるいは他のメタデータを記述することができる。

言語(Language):
 情報資源の知的内容を記述するために用いられている言語を示すものである。

関係(Relation):
 別の情報資源の識別子または、当該情報資源とその情報資源との間の関係を表す記述。関連する情報資源間のリンクや指示すべき情報資源の記述を書くことができる。たとえば、作品の版、作品の翻訳、本の章、データセットからイメージへの機械的変換などがある。

対象範囲(空間的・時間的)(Coverage):
 当該情報資源の知的内容に関する空間的(地理的)あるいは時間的特性を記述する。空間的範囲は物理的な範囲(たとえば天球の一部)を表す。時間的範囲は、当該情報資源が表している内容に関する時間的情報を表すものであり、情報資源の作成や公開に関する日付ではない。

権利管理(Rights):
 権利管理に関する声明文、権利管理に関する声明文へのリンクを表す識別子、あるいは当該情報資源の権利管理に関する情報を提供するサービスへのリンクを表す識別子を記述する。
 

3.3 図書目録に特有の記述項目
 図書目録に特有な記述項目は、3.1で取り上げた記述項目以外のすべてである。しかし、記述項目に書かれる内容がまったくDublin Coreと同じではないがそれに当てはまる、あるいはそれに一致する記述がDublin Coreのいずれかの記述項目の中に含まれているといった項目がある。たとえば、「版表示」はそれに対応する項目はDublin Coreには見られないが、「関係(Relation)」
というエレメントの中に「版表示」と同じ内容が記述される。
 

4 メタデータと図書目録の記述方法の比較
 本章では、メタデータと図書目録の記述形式について、3章での分析をもとに比較を行う。メタデータは、WWW上で利用されていることからも分かるように、機械で処理することを目的としている。そのため、機械が読むことができる、機械のための言語(Markup Language)を用いている。そこで、まずメタデータを記述するための記述形式について説明する。

4.1 メタデータの記述形式
 Dublin Coreでは、メタデータを記述するための記述形式を定めることはほとんどなされてこなかった。現在では、WWWコンソーシアム(World Wide Web consortium)で提案しているRDF(Resource Description Framework)が与えられているので、基本的にDublin Coreの記述はRDFに基づくことになっている。
 RDFとは、WWW上の文書のためのメタデータ記述方式である。WWW上でのメタデータは、同一の記述形式ではなくさまざまな記述によってかかれている。そのため、メタデータ間の相互の利用性を高めることを困難にしている。RDFは、さまざまな記述方法によって書かれたメタデータを共通の記述形式によって表すことを目的としている。しかし、RDFに基づく記述はまだ一般化されていないため、現在ではWWW文書の中への埋め込みを目的とした記述は、HTMLでせざるをえない。
 HTML(Hypertext Markup Language)とは、WWW上で文書を作成するための言語である。タグ(tag:<>ではさんだ予約語)を用いて、文書の構造、画像などのファイルのある場所、リンク先などを記述することができる。また静止画、動画、音声などを含むページも表現可能である。
 WWW上に存在する情報量は膨大なものであり、図書目録のように専門家によって処理されることは困難である。そのため、WWW上の文書の著者が自分でメタデータを作成し、文書の中に埋め込むということが考えられている。以下に、HTMLを用いて書いたDublin Coreの記述例を示す(表2)。
 

表2 HTMLによる記述例



 <meta name="DC.Title" content="図書館情報大学卒業論文目次 平成9年度" lang="ja">
  <meta name="DC.Creator" content="Sugimoto Shigeo">
  <meta name="DC.Creator" content="杉本重雄" lang="ja">
  <meta name="DC.Publisher" University of Library and Information Science">
  <meta name="DC.Publisher" content="図書館情報大学" lang="ja">
  <meta name="DC.Date" content="1998-6-6">

4.2 図書目録の記述形式
 図書目録の記述形式は、記述項目と同様に目録規則において定められている。具体的にどのように記述するのか、以下にその例を示す。

表3 NCR図書の記述形式



本タイトル = 並列タイトル : タイトル関連情報 / 責任表示. - 版表示 / 特定の版にのみ関係する責任表示. ,
付加的版表示 / 付加的版にのみ関係する責任表示. - 出版地・頒布地等 : 出版者・頒布者等 , 出版年・頒布年等.
- ページ数、図版数等 : 挿図等 ; 大きさ +付属資料. - (本シリーズ名 = 並列シリーズ名 シリーズ名関連情報 / シリーズに関係する責任表示 , シリーズのISSN ; シリーズ番号. 下位シリーズの書誌的事項). - ISBN 定価

表4 NCR逐次刊行物の記述形式



 本タイトル = 並列タイトル : タイトル関連情報 / 責任表示. - 版表示 / 特定の版にのみ関係する責任表示. ,
付加的版表示 / 付加的版にのみ関係する責任表示. - 巻次(年月次). - 出版地・頒布地等 : 出版者・頒布者等 , 出版年・頒布年等. -  大きさ + 付属資料. - (本シリーズ名 = 並列シリーズ名 シリーズ名関連情報 / シリーズに関係する責任表示 , シリーズのISSN ; シリーズ番号. 下位シリーズの書誌的事項). - ISBN 定価

表5 AACR2図書の記述形式



 本タイトル[一般資料表示] = 並列タイトル : タイトル関連情報 / 責任表示. - 版表示 / 版に関連する責任表示. , 副次的版表示 / 副次的版表示に関連する責任表示. - 出版地・頒布地など : 出版者・頒布者など , 出版年・頒布年など(印刷地) : 印刷者名, 印刷年 - 冊数およびページ数 : 挿図類 ; 大きさ + 付属資料. - (シリーズ名 = 並列シリーズ名 シリーズのタイトル関連情報 / シリーズの責任表示 , シリーズのISNN ; シリーズ番号. サブシリーズタイトル). - ISBN : 入手条件

表6 AACR2逐次刊行物の記述形式



 本タイトル[一般資料表示] = 並列タイトル : タイトル関連情報 / 責任表示. - 版表示 / 版に関連する責任表示. , 副次的版表示 / 副次的版表示に関連する責任表示. - 数字およびアルファベットによる表示 - (年月次による表示)[初号に表示のないもの]複数の表示方式 = 完結した逐次刊行物 ; 後続の表示 - 出版地・頒布地など : 出版者・頒布者など , 出版年・頒布年など(印刷地) : 印刷者名, 印刷年 - 冊数およびページ数 : 挿図類 ; 大きさ + 付属資料. - (シリーズ名 = 並列シリーズ名 シリーズのタイトル関連情報 / シリーズの責任表示 , シリーズのISSN ; シリーズ番号. サブシリーズタイトル). - ISSN : 入手条件

4.3 共通の記述項目の記述方法の比較
 Dublin Coreと図書目録に共通する記述項目の記述形式を比較するとたとえば、「タイトル(Title)」と「本タイトル」においては、Dublin Coreは”Title”というラベルが記されたタグを用いて

               <meta name="DC.Title" content="タイトル">

となる。ここで、タイトルが日本語で記述されている場合は、タイトルの後に「lang="ja"」と記す。これは、タイトルだけでなく全ての要素を記す時も同様である。NCRとAACR2の場合は、本タイトルは記述事項の一番先頭に記す。「著者あるいは作者(Creator)」と「責任表示」においては、Dublin Coreは"Creator"というラベルが記されたタグを用いて
         <meta name="DC.Creator" content="著者あるいは作者">

となる。NCRとAACR2の場合は、タイトル関連情報の後にスペース、スラッシュ、スペースを記し、続けて責任表示を記述する。
 このように、Dublin Coreはタグというものを使い、それぞれの記述要素をそのタグの中に記述して表す。これに対し、NCRとAACR2は、スペースやコロン、スラッシュなどの記号を用いて記述する。また、Dublin Coreはラベル(Title,Creatorなど)が記されているが、NCRとAACR2は記述項目の内容のみを記述することからその順序が重要となる。
 

4.4 Dublin Coreに特有な記述項目の記述方法
 Dublin Coreに特有な記述項目は、3.2で記した通りである。また、その具体的な記述形式も4.2で示した通りである。たとえば、「資源タイプ(Type)」はタグの中のラベルを"Type"として次のように

         <meta name="DC.Type" content="資源タイプ">

と記す。
 Dublin Coreは、ラベルの名前を変えるだけでその記述形式はどの記述要素においても同じである。また、内容が複数ある場合はタグを繰り返して利用することができる。
 

4.5 図書目録に特有な記述項目の記述形式
 NCRもAACR2も4.2で示したように記述の順序が重要なため、図書目録に特有な記述項目においてもその順序に従って記述されなければならない。また、記述項目の内容とともに、区切り記号も重要な意味を示していると考えられる。それぞれの記述項目の記述例は、4.2で示した通りである。
 

5 まとめ
 Dublin Coreも目録規則も、情報資源についての記述方法を定めたものである。しかし、これまで比較してきたように、Dublin Coreと目録規則はその記述項目においても、記述形式においても違いが見られた。記述項目においては、共通なものもいくつか見られたが、Dublin Coreに特有なものは図書目録には見られない項目であった。記述形式においては、まったく異なっていた。Dublin Coreはタグというものを使って記述するのに対し、図書目録は記述項目の順序が重要であり、その順序に従って区切り記号と呼ばれるものを付して記述する。
 このような違いが出てきた理由としては、まず、処理する媒体が異なることが挙げられる。Dublin Coreは機械処理であるのに対し、目録は元来カードに人間の手で記入することを目的としてきた。また、記述の対象において、Dublin CoreはWWW上の文書といったディジタル資料を主な対象としているのに対し、図書目録は図書館に所蔵されている本や雑誌といった物理的な資料を対象としている。さらに、Dublin CoreはWWW上の文書の著者自身がメタデータを作成するのに対し、図書目録は図書館員という専門家によって作成される。そのため、Dublin Coreは、誰でもメタデータを作成できるように、基本的な要素だけを記述することになっている。このDublin Coreの基本要素については現在も議論がなされており、標準化が進められている。
 
 

参考文献

図書館協会目録委員会編(1994).「日本目録規則1987改訂版」日本図書館委員会
Michael Gorman, Paul W.Winkler 共編, 丸山昭二郎[ほか]訳(1987).「英米目録規則 第2版 日本語版」 
  米国図書館協会[ほか制定] 日本図書館協会
丸山昭二郎編(1970).「洋書目録のつくり方」日本図書館協会
Stuart Weibel, Juha Hakala, 杉本重雄訳(1998). 「DC-5:ヘルシンキ・メタデータワークショップとそれに続く
  活動の成果の報告」, 『ディジタル図書館』, No.11 「ディジタル図書館」編集委員会
杉本重雄(1999). 「Dublin Core Metadata Element Setについて―現在の状況と利用例」.『ディジタル図書館』,  No.14 「ディジタル図書館」編集委員会
杉本重雄(1999). 「メタデータについて―Dublin Coreを中心として―」.『情報の科学と技術』vol.49, No.1,    pp3-10 情報科学技術協会
日経BP(1999).「デジタル大事典1999-2000年版」.日経BP社