本発表では、Brain-Computer-Interfaceやスマートフォン等の現代的なメディウムに営まれる瞬間的、あるいは持続的なコミュニケーションが、いかにして観客(ユーザー)の感覚運動を触発し、心的システムの組成に関与するかを、1910年代以降の「古典映画(Classical Hollywood Cinema)」における「注意管理(attention management)」を手掛かりとして検討する試みである。発表者は、現在、古典映画の観客性を映画内的事象「映画的言説(filmic discourse)」と外的事象「設備(infrastructure)」の両側面から考察している。古典映画は、初期映画の「アトラクション(attraction)」を「物語(narrative)」に抑圧し、観客を映画館の不動の体制にすえ置くことで、その注意を把捉・管理する情報システムとして理解することができる。本発表では、基礎情報学およびHACSに関連する議論を応用することで、映画内に統御された物語を時間化した心的システムの作動、映画館および配給・興行等の映画産業体制を社会システムと仮に措定し、両者の相関するプロセスから、古典映画という情報システムにおける「プロパゲーション(propagation)」の問題に接続してみたい。
キーワード: 古典映画(Classical Hollywood Cinema)、注意管理(attention management)、心的システム、情動(affect)