まえがき


 予定よりも大幅に遅れてしまったが、やっと第3号を仕上げることができた。この号は、期せずして、サイバースペース分析特集のような観を呈することになった。日本でもこの数年のインターネットの普及は目覚しい。それに伴って、ホームページの数も、格段に増加している。その内容は玉石混交であろう。しかし、今まで狭いコミュニティの中だけで発信され、それだけで埋もれてしまっていた、あるいは発信すらもされずに人々の頭のなかに浮かぶだけで消えてしまっていた情報やアイデアが、他の大勢の人々の目に触れるようになったことも確かである。一度発信されれば、理論的には、世界中の人々が読みうる。その影響力のおよぶ範囲は、以前にもまして、広くなった。ただし、言語のバリアは今のところ、どうしようもない。
 最初の3つの論文は、日本で発信されたホームページの状況の分析である。ただし、いずれも、ホームページのためのホームページではなく、その前段階である、何らかの意味での相互交流的活動があって、その結果がホームページとして報告されているものである。
 本号で特筆できるのは、ヨーロッパコミッションのプロジェクトコオーディネーターをしているヴォルフガング・ペープ博士からの投稿を得たことである。外から見た日本およびアジアの状況の把握と評価である。英語ではあるが、ぜひとも読んでいただきたい。最後は、サイバースペースが現れて出現した、新しいタイプのサイバーコミュニティの中での文化変容の状況を、異文化接触という観点から分析したものである。
 この冊子が、次号も続くことを期待したい。情報社会や、サイバースペースについての社会科学的論文が載せられる雑誌はまだ少ない。そのようなことに関心がおありの方は、ぜひとも投稿していただきたい。大歓迎いたします。



関口礼子