私立大学図書館の統計分析

「大学図書館実態調査結果報告」による1990年代の分析

松井 宏

1 はじめに

 「大学図書館実態調査結果報告」は、文部省大学学術局情報図書館課(昭和59年度から学術情報課)が昭和41年度より調査し発行を行っているものである。この調査結果報告について私立大学図書館を中心に集計し分析を行う。

 「大学図書館実態調査結果報告」では、国立大学、公立大学、私立大学と設置主体・規模別に統計データを集計しており、大学図書館をマクロ的に見る場合には有効な統計書である。

 私立大学図書館の発展の度合いを見る指標として、「「図書館資料費」、「図書館・室の職員」、「蔵書数」の3つの項目を中心に平成2年度(1990)から平成11年度(1999)までの10年間の経年変化を追ってみる。このことにより、私立大学図書館の変化を数値的に跡付け、その変化の意味を考察したい。

2 「大学図書館実態調査結果報告」について

 分析対象とする「大学図書館実態調査結果報告」の発行状況は、表1に示すとおりである。

表1 「大学図書館実態調査結果報告」の発行状況

年版名称 調査年 出版年月 調査対象数

昭和41年度 1966 1968年3月 346大学(国74,公37,私235)889館(国309,公62,私518)
42年度 1967 1969年3月 369大学(国74,公39,私256)960館(国329,公58,私573)
43年度 1968 1970年3月 377大学(国75,公35,私267)991館(国373,公56,私562)
44年度 1969 1971年3月 363大学(国75,公32,私256)816館(国356,公52,私408)
45年度 1970 1972年3月 373大学(国75,公32,私266)858館(国319,公51,私488)
46年度 1971 1973年3月 385大学(国75,公33,私277)902館(国309,公72,私521)
47年度 1972 1974年12月 384大学(国75,公33,私276)1,059館(国393,公71,私595)
48年度 1973 1975年3月 401大学(国76,公32,私293)1,036館(国406,公66,私564)
49年度 1974 1976年2月 405大学(国78,公32,私295)1,061館(国429,公56,私576)
50年度 1975 1976年3月 413大学(国81,公33,私299)1,044館(国437,公69,私538)
51年度 1976 1977年2月 419大学(国83,公33,私303)1,113館(国448,公56,私609)
52年度 1977 1978年2月 426大学(国83,公33,私310)882館(国320,公53,私509)
53年度 1978 1979年3月 430大学(国87,公33,私310)900館(国327,公54,私519)
54年度 1979 1980年3月 432大学(国87,公33,私312)913館(国329,公55,私529)
55年度 1980 1981年3月 443大学(国92,公33,私318)914館(国324,公54,私536)
56年度 1981 1982年3月 446大学(国93,公34,私319)920館(国325,公53,私542)
57年度 1982 1983年3月 451大学(国93,公34,私324)932館(国328,公54,私550)
58年度 1983 1984年3月 453大学(国93,公34,私326)938館(国326,公56,私556)
59年度 1984 1985年3月 455大学(国93,公34,私328)989館(国355,公58,私576)
60年度 1985 1986年3月 460大学(国95,公34,私331)965館(国321,公56,私588)
61年度 1986 1987年3月 465大学(国95,公36,私334)1,036館(国367,公54,私615)
62年度 1987-88 1988年3月 473大学(国95,公36,私342)1,042館(国349,公54,私639)
63年度 1988-89 1989年3月 489大学(国95,公37,私357)1,084館(国344,公54,私686)
平成元年度 1989-90 1990年3月 496大学(国95,公37,私364)1,157館(国359,公55,私743)
2年度 1990-91 1991年3月 507大学(国96,公39,私372)1,157館(国349,公64,私744)
3年度 1991-92 1992年3月 514大学(国97,公39,私378)1,181館(国352,公65,私764)
4年度 1992-93 1993年3月 523大学(国98,公41,私384)1,212館(国355,公66,私791)
5年度 1993-94 1994年3月 534大学(国98,公46,私390)1,218館(国328,公73,私817)
6年度 1994-95 1995年3月 552大学(国98,公48,私406)1,151館(国317,公74,私760)
7年度 1995-96 1996年3月 565大学(国98,公52,私415)1,157館(国315,公77,私765)
8年度 1996-97 1997年3月 576大学(国98,公53,私425)1,307館(国332,公101,私874)
9年度 1997-98 1998年3月 586大学(国98,公57,私431)1,343館(国341,公117,私885)
10年度 1998-99 1999年3月 604大学(国99,公61,私444)1,408館(国383,公122,私903)
11年度 1999-00  2000年3月  622大学(国99,公66,私457)1,436館(国381,公132,私923)

 表1からもわかるように、調査開始から10年間は刊行時期や調査対象数も不安定であった。とりわけ昭和44年度の調査は、「「最近における大学図書館の推移について」は大学紛争等により公・私立大学で未回答大学が多数あったため、本年度の報告では割愛した」(文部省, 1971, p. 1)とまえがきに記されているとおり、この間の大学紛争の状況等が調査に影響を与えている。また、このような調査では実態の早い公表が必要であるが、調査から発行までの約2年間のタイムラグは、コンピューター集計を開始した昭和48年度調査からようやく解消した。

 大学図書館実態調査は、「今まで、国公私立大学図書館の全般にわたる実態調査が行われることがなかったので、大学図書館の整備改善が各関係方面において論じられながら、その理解と認識を一層深めることができず、また、実態に即した改善方策を立案する資料が不足しがちであった」(文部省, 1968, p. 368)とあり、このような現状を改善するために実施されたのであるが、しかし、その実施はなかなか困難であった。「国立大学図書館長会議では、昭和37年から再三にわたり、「図書館白書」の刊行または、大学図書館実態調査の実施を企画し、近畿地区国公立図書館協議会はその調査原案までも発表をしたが、調査費等の問題が解決せず実施に至らず」(文部省, 1968, p. 368)、まさにようやく公表されたのであった。

 なお、この調査だけでは実態の把握が困難であるとして「昭和40年度から文部省学術国際局に、大学図書館に学識経験者で構成する大学図書館視察委員を置き、・・・実地視察と実態調査票による調査とあいまって、逐次、各大学図書館の実態が動的にも静的にも明らかにされつつあり、大学図書館の整備改善に資するところが大きい」(文部省, 1968, p .368)と指摘している。高鳥正夫によれば「この制度は昭和40年から10年間ほど行われたが、毎年、国公私立の大学図書館のうちから数館を選び、あらかじめ資料について調査した上で、実際に委員がその図書館を視察して、改善を要する点があれば勧告するという制度」(高鳥, 1985, p. 143)であった。この制度は岩猿も「かなりの意義をもつ」(岩猿, 1976, p. 51)と評価しているのだが、高鳥の指摘にあるように、10年間ほど行われただけで、どのような事情があるのかは分からないが現在は「大学図書館実態調査結果報告」だけが継続して調査を行っている。

3 戦後の私立大学政策を巡る動向

 戦後の大学についての政策動向を主に私立大学を中心に摘出したものを表2に示す。

表2 戦後の大学の政策動向     

年月日 法律関係等 補助金等

1947(昭和22).3.31 教育基本法・学校教法の公布(昭和22.4.1施行)
学制改革6・3・3・4制実施(昭和23)
大学基準の公表(昭和23)
1949(昭和24).5.31 文部省設置法の公布
1949(昭和24).12.15 私立学校法の公布
1952(昭和27) 中央教育審議会の設置
1953(昭和28).8.21 私立学校教職員共済組合法の公布
1956(昭和31).10.22 大学設置基準の省令化 私立大学研究設備助成補助金の確立(昭和31年度〜53年度)
1970(昭和45).5.18 日本私学振興財団法の公布 ← 私立学校等経常費補助金の確立
1970(昭和45).7.1 日本私学振興財団の設立
1971(昭和46).4.1 学校法人会計基準の省令化
1974(昭和49) 大学院設置基準の省令化
1975(昭和50).7.11 私立学校振興助成法の公布
私立大学・大学院等教育研究装置施設設備費補助(昭和58年度)
1984(昭和59) 臨時教育審議会の設置
1987(昭和62) 大学審議会、大学設置・学校法人審議会発足
1991(平成3).7.1 大学設置基準等の改正(大綱化)施行
1998(平成10).10 大学審議会「21世紀の大学像と今後の改革方策についてー競争的環境の中で個性が輝く大学」を答申
1999(平成11).5 学校教育法の改正
1999(平成11).9 大学設置基準の改正(自己点検・評価の実施とその結果の公表を義務付け)
※私立大学協会『私立大学を取り巻く諸情勢資料集』(平成11年度第2版)1999.8を参考にして作成

 新制大学が発足したのは、1948(昭和23)年であった。その前年の1947(昭和22)年には、教育基本法と学校教育法が公布され、教育基本法の第5章において大学制度の基本が定められた。1949(昭和24)年には、私立学校法が制定され、私立学校の自主性が確立し、公的な性格を持つようになった。

 さらに学校教育法第3条において、「学校の種類に応じて設備、編成等について設置基準を定める」との規定を受けて、1956(昭和31)年、文部省令で大学設置基準が定められた。そして、設置基準の中での大学図書館の定量的な基準は、1991(平成3)年の改正(大綱化)まで、大学図書館についての法的な指標となった。

 国の教育政策は1952(昭和27)年に設置された中央教育審議会(中教審)の答申にもとづいて行われるようになっており、中教審の答申を受けて法令化が行われるようになっている。第22回の答申は、その答申が出された年に因み「46答申」と呼ばれた。この答申の高等教育の大衆化と学術研究の高度化に関する指摘は、後に1984(昭和59)年から1987(昭和62)年までの3年間にわたり、首相直属の臨時教育審議会(臨教審)に影響を与えたと言われている。

 1987(昭和62)年、文部省は臨教審の答申を受けて学校教育法の改正を行い「大学に関する基本事項」を審議する大学審議会が発足した。このとき大学設置審議会は、私立大学審議会と統合され大学設置・学校法人審議会となった。大学審議会は、以後次々と答申を出し始めた。大学審議会の一連の答申で最も大きなインパクトを与えたのは、1991(平成3)年の大学設置基準の大綱化である。自己点検や自己評価について基準化された。大学図書館の定量的な基準についても大綱化された。「図書館等を整備するに当たって参考となる場合、何らかの数量的な目安があることが有益である場合もあり、・・・数量的な目安を設けることも考えられる」としていたが、現在のところ設けられていない。

 自己点検・自己評価は、「東大をはじめ各大学は、次々と大部の自己点検・自己評価の報告書を公表した。文部省資料によれば、平成9(1997)年までに、国立大学では100%、国公私立全体では88%の大学が自己点検・評価を行っている。大学評価の動きは、さらに新たな展開を見せる。自己点検・自己評価の脚完成の欠如に対する批判に応えて、外部の専門家・有識者を評価者に招くことが一般化していく。・・・学外の第三者による評価の必要性が論じられるようになっていた。」(大崎, 1999, p.321−322)と述べられ、大学図書館でも自己点検や自己評価に取り組みが見られた。

3.1 私立大学への助成

 私立大学の経常的費用に対する国庫補助は、ようやく1970(昭和45)年から開始されたが、その法的な裏付けは1975(昭和50)年の私立学校振興助成法の制定までまたねばならなかった。経常費の補助を受ける私立大学の会計制度は、1971(昭和46)年の文部省令学校法人会計基準に基づいている。これは、国庫助成が実施された段階で、私立学校に財務報告を行わせるもので、会計基準により統一化が進められた。

 戦後の大学政策について、土持ゲーリー法一は私学に対する「ノー・サポート、ノーコントロールによる自由放任主義は、ある意味では高等政策の不在であるが、別の意味では巧妙な「無政策の政策」であったともいえる。高くつく国立大学の新増設は極力抑えつつ、国民が私費で負担する私学の増大を許容的に認可することによって、政府はきわめて安上がりな経費で国民の教育需要に応えることが可能だったからである」(土持, 1996, p. 268)と指摘している。

 一方、大崎仁は「昭和二四(1949)年に制定された私立学校法は、私学経営の自由を最大限に保障していた。・・・文部省には私学の拡充を管理調整する力はなかったのである。そのような状況で高等教育計画を論じても、基本的には絵にかいた餅にしかならなかった」(大崎, 1999, p. 281)と述べている。いずれにしても、戦後における私立大学への政策は、1975(昭和50)の私立学校振興助成法が制定され私学政策の大転換が行われるまで、永井道雄の指摘のように「大学政策の不在」(永井, 1969, p. 94)であった。

3.2 私立大学等経常費補助と私立大学図書館

 前章で検討したように戦後の大学政策は、1975(昭和50)年の私学振興助成法制定という大転換により、私立大学に対する補助金がどのように推移したかを表3に示す。

表3  私立大学等経常費補助金の推移

年度 予算額 特別補助(内数)

1970(昭和45)年度 132
1971(昭和46)年度 198
1972(昭和47)年度 301
1973(昭和48)年度 434
1974(昭和49)年度 640
1975(昭和50)年度 1,007 17
1976(昭和51)年度 1,290 31
1977(昭和52)年度 1,605 41
1978(昭和53)年度 1,975 44
1979(昭和54)年度 2,355 65
1980(昭和55)年度 2,605 73
1981(昭和56)年度 2,835 81
1982(昭和57)年度 2,835 100
1983(昭和58)年度 2,770 98
1984(昭和59)年度 2,438.5 100
1985(昭和60)年度 2,438.5 105
1986(昭和61)年度 2,438.5 130
1987(昭和62)年度 2,443.5 155
1988(昭和63)年度 2,453.5 185
1989(平成1) 年度 2,486.5 228
1990(平成2) 年度 2,520.5 262
1991(平成3) 年度 2,559.5 301
1992(平成4) 年度 2,601.5 343
1993(平成5) 年度 2,655.5 397
1994(平成6) 年度 2,733.5 475
1995(平成7) 年度 2,803.5 545
1996(平成8) 年度 2,875.5 603
1997(平成9) 年度 2,950.5 669
1998(平成10)年度 2,950.5 695
1999(平成11)年度 3,006.5 751
2000(平成12)年度 3,070.5 815
「日本私立学校振興・共済事業団平成12年度事務研修会資料」による 単位:億円

 私立学校経常費等補助金と私立大学図書館の関係について、1975(昭和50)年〜1989(平成元)年までを分析した『私立大学図書館協会五十年史 本文篇』は、「従来の施設・設備助成から経常費助成へと、時代を画する助成政策の転換がみられた。昭和45年より実施された私立大学経常費補助金は、当該期間に上昇曲線と下降曲線という二つの曲線を示し、この二つの傾向が私立大学の図書館の経営にも反映されるものとなった」(私立大学, 1993, p. 50)としている。そして、「私立大学図書館の図書館資料費の多寡は私立大学等経常費補助金の多寡に正確に比例しているのである。・・・昭和45年度の助成開始以降、助成額がピークに達した昭和56年度までは、私立大学図書館総体の図書館資料費は、大体において対前年度比2桁台の伸張を示していたが、助成額が同額ないし減少曲線を描いた昭和57年度以降平成元年度までは、それが1桁台の伸びしか示していないのである。私立大学図書館の図書館資料費は、この間の状況を如実にしめしている」(私立大学, 1993, p. 59)と指摘している。

3.3 1990年代の私大助成の特徴

 私立大学等経常費補助金は、私立大学等の教員・職員の給与費、教育研究に必要な経費等を補助対象とする「一般補助」のほか、a.大学院等における教育研究の高度化の推進、b.教育学術情報ネットワークの整備等の情報化の推進、c.外国人留学生の受入れ等の国際化の推進、d.社会人受入れ等の生涯学習の推進、e.教育・学習方法等の改善等の大学改革の推進など、社会的要請の強い特色ある教育研究の実績に着目し、一般補助に上乗せして補助金額を増額する「特別補助」がある。1990年代の補助金についての特徴はこの特別補助が大きくなってきていることである。このように、状況について市川昭午は、「九十年代に入ってからは多様化促進の名の下に大学設置基準の改定などの規制緩和政策が採られるようになった。これらは積極的な育成主義というよりも消極的な救済政策とみられらが、他方で経常費補助金における特別補助の割合を急激に増大させているなど、放任主義と統制主義、救済主義などが混在しながら若干勢力を戻してきている」(市川, 2000)と述べている。そして、1999(平成11)年度には、3000億円超える予算額となっている。

4 「大学図書館実態調査結果報告」による私立大学図書館の統計分析

 分析対象とする、大学数の増加を表1から抜き出して各年代間の比較を表4に示す。

表4  年代間の私立大学増加の推移

年代 大学数

1960年代 (1966-1969) 21
1970年代 (1970-1979) 46
1980年代 (1980-1989) 46
1990年代 (1990-1999) 85

 1990年代の増加は規制緩和の影響で著しく、85大学も新しく設立されている。図書館数も、1990年代には179館もの増加をみている。 この10年間の大学は、国・公・私の設置主体を問わず増加しているが、私立大学の増加は大きく、少子化による18才人口の減少の中で大学間の競争の激化が予想される。

表5  私立大学図書館「図書館資料費」の推移

年度 図書館資料費 指数

1990(平成2) 年度 39,344 100
1991(平成3) 年度 40,513 102.9
1992(平成4) 年度 42,925 109.1
1993(平成5) 年度 44,284 112.5
1994(平成6) 年度 44,085 112.0
1995(平成7) 年度 44,809 113.8
1996(平成8) 年度 45,111 114.6
1997(平成9) 年度 46,204 117.4
1998(平成10)年度 48,321 122.8

※年度実績 単位:百万円

 図書館資料費については、1990年代も『私立大学図書館協会五十年史 本文篇』が分析しているように私立大学図書館の図書館資料費の多寡は私立大学等経常費補助金の多寡を反映しているように考えられる。1990年代の助成の特徴である特別補助がどのように影響しているのか、別の視点からも検討する必要がある。情報ネットワーク等に使用されることで図書館資料費への反映につながらない場合もあるように思われる。

表6 私立大学図書館における「学生一人当たりの図書館資料費」の推移

年度 学生一人当たりの図書館資料費

1990(平成2)年度 22.3
1991(平成3)年度 21.9
1992(平成4)年度 22.5
1993(平成5)年度 21.1
1994(平成6)年度 21.9
1995(平成7)年度 21.8
1996(平成8)年度 21.7
1997(平成9)年度 23.6
1998(平成10)年度 21.9
単位:千円

 図書館資料費は増加しているが、それが「学生一人当たりの図書館資料費」の増加に結びついていない。むしろ、減少しており改善の必要がある。1998年度を国立大学学生と比較してみると、38.7千円となっており、私立大学の低位が目立つ点である。

表7 私立大学図書館「図書館・室の職員」数の推移

年度 専任 臨時 総数 専任/臨時構成比

1990(平成2) 年度 5,135 2,144 7,279 70.5/29.5
1991(平成3) 年度 5,198 2,269 7,467 69.6/30.4
1992(平成4) 年度 5,259 2,365 7,624 69.0/31.0
1993(平成5) 年度 5,368 2,697 8,065 66.6/33.4
1994(平成6) 年度 5,402 2,851 8,253 65.5/34.5
1995(平成7) 年度 5,471 3,007 8,478 64.5/35.5
1996(平成8) 年度 5,416 3,059 8,475 63.9/36.1
1997(平成9) 年度 5,443 3,149 8,592 63.3/36.7
1998(平成10)年度 5,421 3,261 8,682 62.4/37.6
1999(平成11)年度  5,293  3,542  8,835 59.9/40.1

 私立大学の増加を反映して図書館員の総数は1990年には7,279名であったものが、1999年には8,835名と増加している。しかし専任職員の増加は僅かでその大半は臨時職員の増加によっている。専任職員と臨時職員との構成比で専任職員の割合は、1999年には遂に60パーセントと切ってしまっている。この傾向は今後も強まることが予想される。臨時職員の増加は、国公私を問わず全体の傾向となっている。

表8  私立大学図書館図書館「蔵書数」の推移

年度 全所蔵冊数

1990(平成2) 年度 92,528,885
1991(平成3) 年度 97,366,868
1992(平成4) 年度 102,502,426
1993(平成5) 年度 107,257,697
1994(平成6) 年度 111,986,387
1995(平成7) 年度 116,865,471
1996(平成8) 年度 122,005,685
1997(平成9) 年度 126,928,695
1998(平成10)年度 131,789,812
1999(平成11)年度  136,906,341

 蔵書数も、図書館資料費の伸びに支えられて1992年度には、1億冊を越え順調に推移している。

4.1 1990年代の大学図書館活動の特徴

 「大学図書館実態調査結果報告」の平成2年度と平成11年度とを比較し、個別事項における調査項目の変化を通じて、この年代の特徴を明らかにする。

表9  「大学図書館実態調査結果報告」の個別事項の調査項目比較

調査項目 1990(平成2)年度 1999(平成11)年度

図書館・室職員(学歴別) 調査あり 調査なし
施設(情報端末スペース) 調査なし 調査あり
蔵書数(電子ジャーナル) 調査なし 調査あり
視聴覚資料所蔵数(CD-ROM) 調査なし 調査あり
時間外開館状況(休日) 調査なし 調査あり
外部委託業務(目録カード等整理) 調査あり 調査なし
外部委託業務(目録所在情報データベースの作成) 調査なし 調査あり
学外者の利用(参考調査) 調査なし 調査あり
図書館の電算化 調査あり 調査なし
電子図書館的機能 調査なし 調査あり

 調査項目の変化から伺える1990年代の大学図書館の動向で大きなものは、電子図書館的機能を提供することになったことであろう。大学図書館が当然のようにインターネット上にホームページを開設し、目録情報や利用に関する情報を提供することが行われるようになった。それは、項目名が「図書館の電算化」であったものが「電子図書館的機能」に取って代わっていることに現われている。他の項目も、電子図書館に沿って項目が追加・変更されている。時間外開館を休日に実施するサービスや学外者に対する参考調査などサービスの深化を調査する項目も増えている。

 図書館職員の学歴別の調査が行われなくなったのは、高等教育の大衆化によってこのような調査があまり意味を持たなくなったことを示すものであろう。

5 おわりに

 1990年代は私立大学図書館の現状を「大学図書館実態調査結果報告」に基づいて分析を行ったが、この統計書を利用して混乱するのは、年度の表示と統計調査の年度が一致しないデータが大半であることである。当該年度の数値は、大学数、学生数、図書館職員数であり、他の項目は前年度の実績である。つまり、年度の表示は調査年度を示すものである。(この論文では、年度は「大学図書館実態調査結果報告」の年度で示した。)

 大学図書館にとって重要な統計をもっと有効に利用できるようにするために、以下の改善を提言したい。

 1:利用者が混乱をしないためにも年度表示と統計内容が一致するように改める必要がある。

 2:統計データは、ホームページでの公開を行う。(すでに、一部のデータは文部科学省のホームページで見ることができる。)

引用文献

文部省大学学術局情報図書館課(1968). 「昭和41年度大学図書館実態調査の結果について」. 『学術月報』21(6). 388ページ

文部省大学学術局情報図書館課(1971). 『昭和44年度大学図書館実態調査結果報告』.

高鳥正夫(1985). 『大学図書館の運営』 (図書館・情報学シリーズ7). 勁草書房

岩猿敏生(1976). 『大学図書館』 (日本図書館学講座6). 雄山閣出版

土持ゲーリー法一(1996). 『新制大学の誕生』. 玉川大学出版部

大崎仁(1999)『大学改革 1945〜1999』(有斐閣選書). 有斐閣

永井道雄(1969). 『大学の可能性』. 中央公論社

私立大学図書館協会五十年史編集委員会編(1993). 『私立大学図書館協会五十年史 本文篇』.

市川昭午(2000). 「私大政策の点検・評価―助成と規制―」. 『教育学術新聞』 2000年10月4日

参考文献

日本私立大学連盟編『私立大学のマネジメント』 第一法規,1994.5

竹村心「学術政策と大学図書館」『現代の図書館』38(2), 2000

日本私立学校振興・共済事業団“私学振興事業本部” http://www.shigaku.go.jp/s_about.htm, 2001.3.23




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