中国における電子ビジネスの現状

CNNICの調査報告による

王 新萃

1はじめに

 本稿は中国ネットワークインフォメーションセンター(CNNIC)が2000年7月に行われた中国のインターネットに関する統計調査の結果報告に基づいて、その調査報告を分析しながら中国の電子ビジネスの現状や発展動向を探っていきたいと思う。本章ではCNNICについての紹介や中国におけるインターネットの発展と普及状況や電子ビジネスの実践を背景として述べたいと思う。

1.1CNNICとは

 中国ネットワークインフォメーションセンター(中国互聯網絡信息中心・CNNIC)は1997年6月3日に成立した非営利目的のインターネット関連のサービス機関である。中国国内のネットワークインフォメーションセンターの職責を担い、1997年10月から毎年2回で中国インターネット統計調査を実施し、中国インターネットに関する政策や法律、その他インターネット関連資料の提供サービスを行う。

 2000年7月に公表した『中国インターネット発展状況統計報告』の主な内容は、中国のインターネットアクセス端末数、利用者数、ドメイン登記数、国際ライン帯域幅及びwwwサイト数である。また、中国におけるインターネット利用者の分布や基本的状況、特徴などの方面に対して概況的な統計分析を行い、さらに、中国の利用者のインターネット使用状況、行為習慣、気になる問題に対する見方や傾向を理解するものである。今回の調査はコンピューターによるネット上での自動検索、オンライン調査、サンプル調査などの方法を採用した。結果に対する比較と検証のためにサンプル調査とオンライン調査を同時に利用した。今回のオンライン調査で回収した回答は162万9361本、有効回答数は57万3902本であった。サンプル調査の有効回答数は3679本。この統計報告は、中国インターネット発展の巨視的概況、ネット利用者の行為や意識の調査結果、ここ数年のインターネット動態発展状況、の3つの部分からなっている。本稿では特に「ネット利用者の行為や意識の調査結果」に重点をおき、分析していきたいと思う。

1.2中国におけるインターネットの発展と普及

 中国では1995年にインターネットが普及しはじめた。その発展段階は3つの段階に分けられる。1:1995年―1997年はインターネット発展の初期段階である。商業ISPが出現し、基礎的なインフラ体系が確立された。2:1998年―1999年は発展の第二の波と言われる段階である。「ネット産業」が一定の規模を形成し始めた。3:2000年から今まではインターネット発展の第三の波と言われる段階である。経済の主要分野でのネット化の進度が加速され、電子ビジネスも発展している。

 CNNICの統計によって、1997年10月から2000年7月までのインターネットの利用者数の変化は以下のようである

図表 1-1 インターネット利用者数の変化(単位:人)

(CNNICの統計報告により作成)

 図表1-1が示すように、中国のインターネット利用者数は半年で倍増するという急速なスピードで伸びている。2000年7月に利用者数は1690万人である。普及率で考えるならば依然低い水準にとどまってはいるが、人口基数が膨大なため、この急速な増加は今後相当期間続くものと予想され、世界最大のインターネット市場となる日も遠くなさそうだと言われる(日本インタ―ネット協会が発表した「インターネット白書2000」によると、日本のインターネット利用者は2000年2月末が1937万7千人となり、世帯普及率を20.09%と推計している)。

 2000年7月の調査結果によると利用者1690万人の内に、専用回線使用は258万人、電話回線使用は1176万人で、専用回線と電話回線を共用している利用者は256万人である。コンピューター以外のその他の設備(移動電話や情報家電)を使用している利用者は59万人となっている。

 利用者の性別を見ると、男性は74.68%で、女性は25.32%である。男性の利用者はおよそ女性の3倍であって、圧倒的に優勢である。最近女性の割合が増えていることが分かる。年齢を見ると、75.95%のユーザーが18歳から30歳までであることが分かった。また利用者の低年齢化も進んでおり、10歳から15歳の利用者が増えている。40代50代へのインターネットの普及も認められる。

 地域をみると、北京、広東、上海の利用者数が全国の42.33%で、山東、江蘇、浙江、湖北、四川、遼寧の利用者数が31.54%、残りの24省の利用者数がわずか26.13%を占めることは分かった。これは経済発展のスピートの早い東南沿海都市と大都市ではインターネットの普及も早いということを証明している。今まで、沿海部と内陸部の情報格差は経済格差以上に開いていたが、縮小し始めると早いのではないかという意見もあった。インターネットの場合、国がバックアップして地方を助けて行けば、格差縮小の効果も上がるであろう。

 利用者の学歴を見ると高等専門学校以上(高等専門学校、大学、修士、博士を含む)の学歴を持っている利用者は全体の84.67%を占めている。高学歴の利用者が多いということが証明されている。職業分布を見るとトップ一1から三3までの職業はパソコン・IT業(13.60%)、科学研究・教育事業(12.63%)と商業・貿易(9.13%)である。コンピューター業者と教育業者は中国ネット利用者の2大職種であることがわかる。利用者の月収を見ると1001元−2000元が37.77%で、501元−1000元が28.19%で、2001元−4000元が18.45%であることが分かった。これは中等レベル所得者層と高収入の利用者が多いということを示している。収入とネット接続料金の関係からみると、ある程度の収入がなければインターネットを利用できないという現状が言えるだろう。

 コンピューター数について、2000年7月に、インターネット使用のコンピューター台数は650万台で、そのうち専用回線使用は101万台、電話回線使用は549万台となっている。

 CNドメイン数と地域分布を見ると、ドメイン数の60.62%は北京、広東、上海に集中している。他の31個行政区域の割合は39.38%である。2000年7月の統計によって、CNドメイン数は99734個であることが分かった。COMはそのうちの79.09%を占めている。これはインターネットが社会的に、商業的に普及していることを示している。

 wwwサイト数も毎年増加しており、27289個に達している。国際ライン総容量は1234M(メガ)で、急速に発展している。

1.3 中国における電子ビジネスの実践

 中国の情報化の進展は、3つの分野に大別できる。第一は業種や部門を越えた情報化システムの確立である。各部門がネットで結ばれて、情報を迅速に伝達することができる。第二は上海、北京など経済の発展した都市を中心とし、行政区域を越えた情報化システムの確立であり、中小企業向けに情報サービスを提供することができる。第三は大中型企業におけるネットサービスを中心とした電子ビジネスの推進である。

 1999年に中国の通信業、ソフト産業が代表する電子情報産業の国内生産総額は全国GDPの3.4%を占めている。1999年末から、企業間の電子ビジネス(B2B)は新しいホットスポットになっている。(大量の)新しい企業間の電子ビジネスサイトは大量に出現して、聯想、TCLなどのIT、電気製品の大型企業はたくさんの資金を投入して企業間の電子ビジネスを展開しはじめた。

 1999年から1年あまりの発展を経て、中国の電子ビジネスは空前のブームを示した。2000年1月には、主要なインターネットサービス業者が共同して「中国企業インターネット接続サービス連盟」を設立した。伝統的な製造業がネット経済に参入を開始してきた。大企業を中心とした企業間の電子ビジネスは急速に発展している。同時に電子ビジネス分野の国際化傾向も激しくなった。国外からの投資が中国の電子ビジネス業界に入って、一部の外国の関連企業も中国市場に参入してきており、中国の電子ビジネス企業が海外で上場し始めた。

2オンライン広告について

 本章では、CNNICの調査結果を見ながらオンライン広告に対する利用者の意識を分析したいと思う。インターネットにおける広告はインターネット広告と呼ぶ。インターネットにかかわらずコンピューターネットワーク上の広告すべてをオンライン広告と総称する。オンライン広告という言葉は、狭義では販売促進を主たる目的とするいわゆる広告を意味する。広義では広告や広報をはじめとするコミュニケーション活動全般を意味する。

図表 2-1 オンライン広告に対する態度

項目 割合

よくクリック 8.46%
たまにクリックする 46.14%
ほとんどクリックしない  34.56%
まったくクリックしない 6.20%
表示速度の遅れに不満 4.85%

 1999年のCNNICの調査結果と比べるとオンライン広告に対する態度は、よくクリックすると答えた割合はあまり変わらないが、ほとんどしないとしないが徐々に減ってきて、たまにするという割合が増えている。また表示速度の遅れに不満がある利用者も減ってきており、中国ネット利用者のネット広告に対する興味の深まりを垣間見ることができる。

 上表が示すように9割近くの利用者はオンライン広告をクリックしたことがある。しかしクリックの頻度はやや低下の傾向にあることが分かる。これは中国だけではなく日本でも深刻であるようだ。クリックすることで何か利益があるかどうか利用者は厳しく判断しているようだ。

図表 2-2 どの種類の広告に引きつけてクリックするのか(複数選択)

項目 割合

懸賞活動 49.24%
ニュース情報 47.86%
公益情報 45.21%
娯楽活動 38.84%
学術活動 29.94%
商品情報 27.67%
新しいサイトの紹介  24.39%
イメージ広告 23.17%
商業会社 12.77%
その他 9.64%

 図表 2-2が示すように、懸賞活動、ニュース、公益、娯楽などの種類の広告がよく利用者の目を引きつけている。

 インターネットにおける懸賞は、アクセスの増大に対してもっとも容易かつ既効性が強い手法であることが言えるだろう。しかし販売促進をねらい商品・サービスと懸賞に内容が離れていると、顧客を外してしまうことがある。また懸賞に引かれた見込み客をサイトに定着させるためには、サービスの仕様や個人情報の登録などの仕掛けを用意しているサイトは多い。

図表 2-3 どの形式のオンライン広告は最も注意力を引くのか

項目 割合

アニメーション広告  59.77%
バナ−広告 14.17%
ポップアップ広告 9.78%
テキスト広告 7.68%
メール広告 6.55%
キーワード検索広告 2.05%

 調査結果によると動画効果のある広告とバナー広告はよく利用者の注意力を引く。今インターネット上で画像や音声を多用してゲームやクイズといったエンターテインメントに凝ったものが増えている。しかし内容を盛りだくさんにしすぎてダウンロードに時間がかかる、或は目的とする情報にすばやくアクセスできないというのは好ましくない。利用者は目的の情報にすばやくアクセスできることを求めていることがわかる。

 バナー広告はその画像のスペースの中で情報を発信できるだけでなく、広告に興味を持った利用者はそれをクリックすることで広告主のサイトへジャンプできる仕組みになっている。バナー広告の効果は、バナー広告の露出自体の効果であるインプレッション効果と、バナー広告をクリックすることによる生じるレスポンス効果に分けられる。ちなみに、バナー広告はクリックすれば必ずHTMLファイルにジャンプするというものでもなくなり、映像や音声に導くバナー広告も増加していくであろう。

図表 2-4 利用者は商品やサービスを購入する時に参考の為にオンライン広告の電子メールを受け取りたいかどうか

項目 割合

受け取りたい 33.06%
受け取りたくない  49.43%
分からない 17.51%

 上表が示すように、電子メールの広告を受け取りたい利用者はいまだ3割あまりである。利用者は一番心配している問題は個人情報の漏れであろう。多くのウェーブサイトはアンケートなどを実施し、利用者の個人情報を収集している。そのデータベースを活用し、広告メッセージを含んだ電子メールを配信するのである。利用者の個人情報をきちんと保護していれば、利用者を識別して異なる広告メッセージを送ることは、1対1のコミュニケーションを可能にするものとして期待されている。

図表 2-5 今後1年、どの種類の広告が最も宣伝効果のある広告だと思うか

項目 割合

オンライン広告  45.54%
テレビ 41.34%
屋外広告 4.48%
新聞 3.94%
雑誌 2.04%
投稿広告 1.70%
ラジオ 0.96%

 上表が示すように、オンライン広告は従来のメディアに比べて、その効果が大きくなっている。その理由はオンライン広告の特徴であると思う。オンライン広告は従来の伝達手段と比べて無限大の情報を発信することができる。インターネットには国境がないので、国の規制や管理から解放された自由な状態で1対1に発信できる。顧客や取引先が世界各地に広がる大企業にとってはありがたいメディアであろう。小さな企業でもグローバルに事業を展開できる機会を得ることができる。またインターネットは1年中ずっと運行しているメディアであり、情報を更新する頻度も自由で、リアルタイムで情報を更新することができる。

 さらに、マスメディアと決定的に異なるのは、1対多のコミュニケーションから1対1のコミュニケーションまでが可能なことである。メッセージを目標とする対象にナローキャストできるのでマスメディアのような無駄がない。またオンライン広告はマスメディアを利用した広告と比較すれば小さなコストでメッセージを送れるのも忘れてはならない。ウェーブサイト等の製作費や維持管理費もかなり安くなっているので、電子ビジネスには個人や小さな企業でも簡単に参入できる。

3オンラインショッピングについて

 本章では調査結果に基づき、消費者のオンラインショッピングに対する理解や認識を明らかにしたいと思う。

 オンラインショッピングとは、消費者がインターネット上のバーチャルショップ中の好きな品物をウェーブや電子メールで注文すれば、商品が発送されというものである。他のどんなメディアによる注文よりも簡単で迅速である。代金の支払い方法には、代金引替、銀行振込、郵便為替、クレジットカードなどがある。

 電子ビジネスはネットワーク上での電子化された商取引全般を指す言葉であるが、最近は、一般家庭を含めインターネットが急速に普及したため、インターネット上でのオンラインショッピングを指すことが多くなった。ビジネスの中で売り手、買い手共に企業の取引すなわち企業間取引をBusiness to Business取引(B to B或はB2B)、売り手が企業、買い手が個人の取引をBusiness to Consumer取引(B to C或はB2C)、さらに売り手、買い手共に個人の取引をConsumer to Consumer取引(C to C或はC2C)と呼ぶ。オンラインショッピングといえばインターネット利用者による電子商店でのオンライン購入を連想するが、これはB to Cの取引に該当する。

 インターネットでの企業の電子ビジネス行為を分類すると、3つの段階に分かれている。

 第一段階は、オンラインで情報を流す。製品の紹介、広告と宣伝、ユーザーの情報収集、ユーザーサービスなどの行為である。第二段階は、オンラインでオーダーを受けたり、オンラインで商品を購入したりすることである。第三段階は、Integration段階といわれ、企業は代理店或いは客とオンラインで情報のやり取りをする行為である。

 調査によって、今の企業がオンラインで行う電子ビジネス活動は主にオンラインで情報の公開と収集、商品の紹介などである。オンラインでの販売あるいは購入などの活動がまだ少ないのであることはわかった。

図表 3-1 電子ビジネスサイトにアクセスするか

項目 割合

よくする 24.50%
たまにする 47.96%
あまりしない 23.99%
したことがない  3.55%

 電子ビジネスという概念が初めて中国に紹介されたときは1993年であった。初めてのオンラインビジネスは1996年に行われ、1998年に国民経済情報化を推進するため、企業間の電子ビジネスの試行項目は開始し始めた。1999年に、消費類電子ビジネス市場が始まり、電子ビジネスは旺盛な発展の勢いを示している。

 図表 3-1により、2000年7月に電子ビジネスサイトにアクセスしたことがある利用者は全体の96.45%を占めている。これはオンラインショッピングに対する利用者の態度が積極的であることを反映している。

図表 3-2 過去1年間であなたがインターネットを通して商品やサービスを購入することはあったかどうか

項目 割合

あった 16.28%
なかった  83.72%

 1999年に、中国における電子ビジネスは盛んになった。1999年に消費類電子ビジネス活動の中で、オンライン買い物の総交易額は5500万元に達した。

 2000年の4月まで、消費類(B2C/C2C)電子ビジネスのサイトは1100あまりに達した。図表 2-7が示すように、利用者はオンラインで買い物する割合は16.28%に達した。2000年に9割近くの利用者は、電子ビジネス活動に参加しようとしている。オンライン買い物の総交易額は1999年に比べって500%の増長は予測できる。

 しかしながら、オンラインショッピングに対する興味を持っていることにもかかわらず、オンラインショッピングをした利用者がいまだ16.28%で(調査によって競売サイトで競売に参加、購買したことがあるユーザーは1割にも(足らず)満たず、わずか8.09%である。)、先進国と比べるとかなり少ないことは現実である。オンラインショッピングをしない要因は第4章の問題点の中で詳しく述べたいと思う。

図表 3-3 オンラインショッピングをする理由(複数選択)

項目 割合

時間を節約できる 45.51%
好奇心があって、面白いと思う  39.49%
操作便利 32.57%
費用を節約できる 30.49%
稀な商品を探す 29.21%

 インターネットの利用者の個人情報を見れば、その70%は25歳以下で、さらに低年齢化も進んでおり、10歳から15歳の利用者が増えている傾向が見える。また確実に女性への普及の傾向を示している。さらに、学歴、職業や収入の面を加えて考えるとオンラインショッピングをする利用者は主に時間や費用の節約、好奇心がある、便利さなどの理由を考えている。

 すべてオンラインで完結する便利さは大きなメリットの一つである。電子決済やセキュリティなどの電子商取引に関する環境が整備されれば、オンラインショッピングの利用者が増えるだろう。

図表 3-4 利用者として、インターネット上でどの種類の商品(サービス)の提供を希望するか(複数選択)

項目 割合

コンピューターの関連商品  47.03%
書籍類 46.70%
教育学習サービス 34.57%
通信類 30.72%
プレゼントの配達 29.81%
AV製品 29.68%
チケットのオーダー 29.66%
生活、住宅用品類 28.75%
家庭電器製品 25.20%
金融、保険サービス 23.58%
スポーツ用品類 20.81%
医療サービス 19.91%
服装類 19.48%
カメラ製品 15.46%
その他 12.11%

 順位から見れば、書籍やPCのハード・ソフトなどが主に取引されているが、今後は家電と日用品に移行していくと見られている。さらに、通信教育と通信医療の成長も期待されている。

 電子ビジネスのサイトを成功させる要素についての調査結果により、情報量と更新の頻繁さ、サービスの豊富さがサイト成功の要素に挙げられている。現在、中国の電子ビジネスにおける経営している商品は14万点であり、月の売上額は1000万円を超えている。しかし、商品やサービスの種類はまだ少なく、消費者のニーズが(満ちていない)満たされていないことも問題であると思われる。

図表 3-5 将来最も見込みのある電子ビジネスは何だと思うか(複数選択)

項目 割合

オンラインショッピング 54.67%
オンライン通信 51.86%
オンライン学校 49.39%
オンラインで株の売買 44.55%
オンライン情報サービス(有料) 40.71%
オンライン病院 32.60%
バーチャル・コミュニティ 28.81%
オンラインゲーム、娯楽サービス  27.69%
オンラインプログラムオーダーサービス  26.29%
その他 8.20%

 2000年7月分は複数回答となっている。上表から、利用者の将来のネット事業に対する期待度が、各事業ともその比率を向上させていることは明らかである。各項目とも比較的に順調に増加している。その中でもオンラインでの取引が顕著である。オンラインショッピングの環境や法律の枠組みが急ピンチピッチで進む中、今後もオンライン取引の需要が伸びていきそうだ。

4電子ビジネスの問題点

 ネット経済と電子ビジネスの発展は中国に特別の機会を提供したが、同時に大きな困難をも引き起こしている。その中には経済社会の環境の問題、企業自身の問題などがある。

 環境についていうと、中国の電子ビジネスの発展を妨げている主要な要因としては、金融ネットサービスの遅れ、配送システムの欠如、消費水準の低さなどが挙げられる。中でも安全性の欠如は電子商取引展開に影響する重要な要因である。

 CNNIC調査と国家情報産業部の調べでは、ネットユーザーが最も心配しているのは支払いの安全性の問題で、その比率は8割を上回っている。

 他方、企業情報化水準の遅れ及ぶ伝統的な観念と習慣による束縛が電子商取引の展開を妨げる要因になっている。多くの電子ビジネスのサイトは往々にして自己中心的で、顧客の立場に立っていない。このため提供するビジネス情報も顧客の需要を満足させられない場合が多い。電子ビジネスを従事している企業は投機性が強く、着実性に欠けているため、多くの人がネット経済はバプル経済に変わってしまうのではと心配している。

図表 4-1 オンラインショッピングの最大の不安

項目 割合

安全性が保障されていない 31.76%
商品の質、アフターサービスそしてメーカーの信用が保障されていない  28.33%
支払いが便利ではない 13.34%
商品の配達に時間がかかる。配達システムが不完全 10.14%
価格が魅力的ではない 7.74%
オンラインで提供された情報は信頼できない 7.28%
その他 1.41%

 安全性に回答が集中している。第3章の図表 3-2が示すように、オンラインショッピングをした利用者がわずか16.28%で、その要因は安全性の欠如であると思われる。インターネット上で情報を保護するセキュリティ対策をしなければ、侵入行為などにより大切な情報が盗まれてしまう危険がある。オンラインショッピングの場合に、クレジットカードの番号が盗用されれば、大きな被害を受けるだろう。そして個人情報或はプライバシーの保護も重要である。

 さらに、商品の品質、サービス、配達、価格などのさまざまな側面から見れば、利用者の心配をなくすために事業者に対して、取引の適正化を図ることや提供すべき情報について周知することが求められている。

 オンラインショッピングのメリットを最大限に生かすため、セキュリティの確保と同時に、使いやすさを考えなければなるまい。品揃えの豊富さと個人のニーズにあったサービスを提供することで、使いやすく安全性の高い環境を作り出すことは重要である。便利な支払い方法や整備された配送システムが不可欠である。

図表 4-2 商品を注文して支払いをしたのに品物が配達されなかったという経験はあるか

項目 割合

ある 22.01%
ない  77.99%

 商品の配達について、代金を支払ったが商品が届かないというケースのある顧客は、2割以上を占めている。この原因はサービス業各領域がIT業に結びついていないと思われる。中国のオンラインショッピングにおいて商品の配達は地域によってかなり異なっており、『中国首届網上購物測試報告』によると、北京、上海、広州等の都市の利用者は一週間以内に商品を貰ったが、他の都市の利用者は限定の期間内で商品が届かなかったケースはあることが分かった。

 さらに、電子ビジネスの場合、一部の悪質な事業者がいて、個人情報を悪用する、先払いで代金を受け取ったら商品を発送しないなど消費者に被害を及ぼすなどの事例が見られる。これは消費者意識のレベルアップと電子ビジネスの法律の確立により防ぐものであろう。

図表 4-3 インターネットを通して取引することに満足しているか

項目 割合

満足している 47.20%
満足していない  52.80%

 半分以上の利用者がオンラインショッピングについて不満があることは分かった。その原因は以下のように考えられる。1:取引の流れがはっきりしていない。2:商品の紹介が詳細ではない。3:商品の種類が少ない。4:アフターサービスが提供されていない。5:価格が安くない。6:支払いが便利ではない。7:配送速度が遅い。8:安全性が整っていない。

図表 4-4  RMB1000元以上を超えた金額を支払う場合は、どのような支払い方法を希望するか

項目 割合

代金引き換え(現金決算)  48.74%
クレジットカード 22.08%
インターネット 9.18%
郵便為替 5.63%
銀行為替 5.30%
EMSや速達代金引換 4.90%
銀行自動引き落とし 4.17%

 図表 4-4により商品の支払いについて最も安全だと思われる方法は代金引き換え(現金決算)である。クレジットカードでの支払いは便利で且つ簡単な支払い方法と思われる。そのほか、電子的に行う銀行振り込みであるが、中国では一般家庭には普及していない。日本では信頼性と安全性を確保した「電子マネー」という新しい支払い形態が次世代の電子決済の方法として実用化されつつあるが、今の中国では、信用取引の基盤は整っていないので、大金を支払う場合に、多くの消費者は被害を避けるために商品を届ける時に現金で支払うという方法を選択する。

図表 4-5 ウェーブサイトの経営者が市場を拡大するためにユーザーの個人情報を取得する行為を認めるか

項目 割合

賛成 17.66%
反対 74.43%
分からない  7.91%

 図表 4-5が示すように、7割以上の利用者は個人情報を取得して利用する行為に反対している。しかし、情報技術が進むと個人情報が大量に蓄積、利用される可能性が高くなり、個人情報が不当に利用される恐れも強まった。プライバシーを保護するために個人情報保護の法律を作らねばならない。

5終わりに

 以上、CNNICの最新統計報告から見た中国の電子ビジネスの現状を分析した。本章では、まず1997年10月から2000年7月まで行われた調査の結果によって個人使用状況の発展変化について語る。次に、オンライン広告を含む電子ビジネスの現状と問題点をまとめる。

5.1中国インターネット利用者の使用状況の発展動態

 中国のインターネット接続端末数は、ここ数年、確実かつ急速に増えている。しかし、インターネット利用者数や接続地点の状況を考えると、一家に1台或はインターネット利用者1人につき1台という状況もまだまだ当分先のことのようである。

 インターネットへの接続時間が1週間あたり1時間以内、という利用者は徐々に減少、2000年7月の時点ではわずか0.02%となっている。それと同時に10時間以上という利用者が増加し、2000年7月では半数以上となっている。中国ネット利用者の利用頻度の向上が中国のネット普及を反映している。

 収入とネット接続料金の関係で見てみると、中国の接続料金はやや高いのが現状である。その料金の出所がどうなっているのかを計ることは、中国ネット利用者のインターネットに対する関わり合いを見る上で非常に重要な指標となる。全体的な傾向として公費の割合が減少し、自費の割合が多くなってきている。これは中国社会の所得の向上も反映しているのだが、中国ネット利用者が自費を出してもネットに接続したい、という欲求を反映しているだろう。

 1999年7月分と2000年7月分だけの比較ではあるが、ネット接続の目的に大きな変化はないようである。その特徴は情報収集が大きな割合になっているということである。メールの利用、検索エンジン、ダウンロードの順位に変動はない。チャット利用が少し増加している。科学技術やパソコンの情報が求められていることが分かる。娯楽体育情報も増加する傾向がある。ニュースが科学技術・パソコン情報を上回っている。電子書籍の人気も高い。

 中国インターネット不満の2大要素は接続料金の高さと接続速度の遅さである。これらは中国のネット市場の発展に直接結びつくものであるので、ネット関係者も早急に改善していく方向に向かっているようだ。

5.2 電子ビジネスの現状と問題点

 中国では1997年3月にchina byteで初めて商業的オンライン広告が表れた。その後、オンライン広告は互換性が強い、カバー率が大きい、対象が絞りやすい、統計に便利などの利点によって、注目が集められている。楽観的予測によれば、2001年にオンライン広告の販売額は10億元を超えるとされる。しかし、今中国のオンライン広告主の多数が外資と合資企業であり、一般の国内企業はオンライン広告に参入しておらず、まだ伝統のメディアを利用している。1999年に伝統のメディアによる広告販売額が622億元であり、オンライン広告はその1%にも満たず、今後の発展が期待されている。

 さらに、最新の統計データにより、「中国インターネット利用者が2000万の大台を越え、中国の電子商取引は加速度的に普及する見込みで、今年2001年、中国ECの成長率は5倍以上、経済規模は数十億元となる」と中国で最も影響力のあるB2Cサイトである8848ネットの創始者王峻涛氏は語っている。

 しかし、中国の電子ビジネスの発展状況と先進国との間は大きな差が存在する。中国は発展途上国であり、情報基盤も脆弱である。1人あたりの通信基盤施設保有率は非常に低い。ネットワーク上の資源も不足しがちである。法体系も不完全である。中国のIT利用は、先進諸国に比べ10年から20年遅れていると言われている。中国国家経済貿易委員会経済情報センターの情報により現在中国の電子ビジネスの発展水準はアメリカのわずか0.23%であるということが分かった。その差の要因は以下のことだと思われる。まず、国全体の情報能力と情報化水準が低いことである。1万人のうちの接続端末台数は、中国で0.16%台であり、アメリカの0.02%に過ぎない。情報公開状況から見ても、先進国と比べて大きな差がある。次に、企業全体の情報化水準が高くないことが上げられる。国家重点企業が情報技術や設備投資にかける累計は総資産の0.3%に過ぎない。中小企業の半分が依然として情報端末を導入していないというのが現状である。第三に、IT産業の構造が合理的ではない。管理体制と政策法規環境がIT産業の高度成長に適応していない、信用取引の基盤が整っていない、金融と物流のネックを解消していない、暗号化技術は進んでいないなどの問題もある。

 こうした背景で、電子ビジネスを評価することはまだ早いと思われる。この論文において、調査データなどはできるだけ最新のものを紹介しているが、完成するまでの期間でまた新しい調査が行われたので、それらのデータは常に大きく変動しているのである。ただし電子ビジネスの現状を概観し考察することが意味のあることだと思う。今後の可能性を読み取ることができるだろう。

参考文献

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