まえがき


この冊子の主力をなしている図書館情報大学大学院でのわたしの授業が、「情報社会論」から「国際教育文化情報論」と「国際教育文化情報研究」に変わった。同時に、大学院博士課程が前期・後期とも設置され、研究科の名称も、図書館情報学研究科ではなく、情報メディア研究科に変わった。しかし、この冊子の名称は、以前のとおり『情報社会試論』を継続することにする。その方が、情報メディアもその中に含まれ、幅広いテーマを扱えると思うからである。
思えば、1994年、この冊子の第1号が企画されたとき、用いた印刷の道具はオアシス機であった。優れた機能をもつワープロとプリンターが開発され、デスクトップパブリッシングが可能になった。今では、MSWordに統一している。
しかし、ここで問題が起こった。表紙は変えたくないので、依然として、まだオアシスの機械を用いてきた。ところが、今年はいざ印刷をしようとしてみると、毎年使っていた機械は壊れて、事務所はもうオアシスの機械は修理しないという。仕方がないので、学内の事務部門でまだオアシスの機械を置いているところを探しまわった。研究事務室、他の講座、学務課、会計課と学内中のあちらこちらを煩わせ、結局、庶務課で表紙を印刷し終えた。途中、Wordで印刷しようと入力もしたが、すこし書式が異なるのはがまんするとしても、これも手近な機械では印刷できなかった。紙の規格が、世の中A版に統一される傾向があるなかで、本誌はB版であり、しかも背表紙の厚さがあるため用紙が規格外であることと、紙の厚さのためである。
これひとつを例にとってみても、いかにハード面が、実際の生活であるソフト面を規制してくるかを知ることになる。いかに技術が毎年毎年変わっているかも感じとることになった。そしてそれと同時に、伝統と進歩を実生活のなかで調和させるのがいかに難しいかも。
この授業は、本年度は、東京のサテライト教室で、しかもオンラインゼミナールの形で行った。この新しい授業の試みについても分析しているので、機会があったらどこかで報告したいと思っている。この冊子は、関口・渡辺論文以外は、その授業の成果である。


2001年3月22日
関口礼子
情報社会試論 Vol. 6 (2001)