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基礎情報学/ネオ・サイバネティクスの研究,論考発表サイト
 

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研究会紹介

 ネオ・サイバネティクス研究会は、2000年に設立された東京大学大学院情報学環・学際情報学府の西垣通研究室を母体として発足しました。

 東京大学大学院情報学環・学際情報学府は、その名の通り情報学の研究教育組織ですが、情報学環の「環」や学際情報学府の「学際」の語が象徴しているように学問の横のつながりを多分に意識して創設された組織です。制度設計としては、たとえば大学の伝統的な部局構成である縦割りの組織形態をとらず、横の連係に重きがおかれました。そのおかげで、情報学環・学際情報学府(以下、情報学環と略記)では、「情報」をキーワードに固有の学問領域群を横断し、先端的なプロジェクトが数多く生まれています。学問のタコツボ化も起こりにくくなりました。

 発足当初から情報学環では、理工系の領域だけでなく、生命や人間、文化、社会の領域までを捉え直す情報学の基礎理論の構築が要請されていました。というのも、そうした基礎理論が不在だったからです。情報学の鍵概念である「情報」概念ひとつをとっても、情報工学(情報科学)における情報概念が、人文社会科学の領域にも無批判に取り入れられがちでした。人文社会科学の領域は、人間における意味や価値の問題に真摯に向き合わなければならない分野であるにもかかわらず、意味を捨象した工学的な情報概念がまかり通っていたといってもよいでしょう。あるいは、情報の概念が曖昧なまま学術活動が広く行われています。こうした現状を変えるべく、情報学環の西垣研究室において、情報学の基礎理論である「基礎情報学」が提唱されました。その目的は、情報学の前提を徹底的に見直し、従来の標準的アプローチと異なる新鮮な方向性を探り、開拓していくことでした。誕生して日が浅いこともあり、単なる情報工学の初歩と間違えられるなど、いまだに社会的に十分な認知を得ているとは言いがたい面も皆無ではありません。しかし今や基礎情報学は、情報教育界や情報システム業界などからも着目され、熱い期待を集めつつあります。また、生命、メディア、機械などをめぐる問題について、システムという観点から考察する国際的な知的潮流「ネオ・サイバネティクス」のなかでも、確固たる位置を占めつつあります。

 西垣が2013年に東京大学を定年退任したことにともない、重要な課題となったことがその知の継承です。情報学環が縦割りの組織でない以上、基礎情報学の知が、新任教員を中心として受けつがれる可能性は小さいといえます。なんらかの手段を講じなければ、個々人の知的活動もまとまりを欠き、発展は難しくなることが予想されました。こうして、西垣の指導をうけた大学院生や新旧の助教(助手)を中心に、ネオ・サイバネティクス研究会という私的な研究会を組織するという計画がたちあがりました。これはいわば横の線ではなく縦の線を描く作業であり、基礎情報学を受けつぎ深化・発展させる試みであるといえます。

 ネオ・サイバネティクス研究会には本サイトに個人ページのある研究者以外にも、さまざまなメンバーが参加しています。基礎情報学だけでなく、オートポイエーシス論、生命記号論、ラディカル構成主義に興味のある人も気軽にいらしてください。