『人間非機械論: サイバネティクスが開く未来』(講談社選書メチエ, 2023年6月刊行)は、ネオ・サイバネティクスと呼ばれる学問的/実践的なムーブメントについて、その理論的な要点や形成過程、そして基礎情報学をはじめとした現在に至る様々な展開を、幅広い読者に向けて紹介した書籍である。今回は、特にネオ・サイバネティクスの「科学的な認識論の転回」という側面を主題に、同書の内容および関連する問題について、社会学・思想史およびメディアアートを専門とするお二人の読評者を迎え、著者とともに議論して行く。
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2022年は,コンテンツ生成の人工知能が脚光を浴びた年であった。これまでの創造性の定義によると,たしかに人工知能は創造性を宿しているといえる。しかし,機械の創造性は,人間の創造性とまったく同じなのだろうか。
本講演では,創造性の定義やcomputational creativity,観察の複数性などの検討を行いながら,機械の創造性と人間の創造性との比較検討を行い,創造性の根源について考えていきたい。人間の創造性が基底にあってこそ機械の創造性は生まれる。
(ネオ・サイバネティクス研究会 / 情報システム学会 基礎情報学研究会 / 青山学院大学 革新技術と社会共創研究所 合同開催)
西洋思想で感性というとき、刺激を受容する感官による経験的な感覚所与の直感をさす場合がある。それは悟性や理性や知性とは峻別された低次の認識能力のことをいう。この意味での感性であれば、外部状態や内部状態のデータを取得するセンサーをそなえた機械ならこれをもつといってもおかしくなさそうである。しかし、日常的に感性というとき、それは必ずしも低次の認識能力ということでは汲み尽くしえない美のセンス、知性的な直観や倫理的な実践にさえ通ずる意味合いを多分に含みうるものである。この意味での感性は、機械と人間の異同を考察するにあたり一つの重要な鍵となるであろう。本発表では基礎情報学の立場から感性について試論する。
本発表の目的は,従来の文学研究,文芸評論の方法論的限界を指摘し,2000年代に提起された議論を更新することである。「近代文学の終わり」以降に登場してきた新しい文学に関する種々の議論は,ポストモダンのテクスト至上主義に対する,批判的意義を有している一方で,これまで十分な検討がなされているとはいえない。
本発表では,「情報」という観点から,従来の記号論的な分析ではなく,ネオ・サイバネティクスによる文学システム論を用いる。その際,自律的な認知主体である,われわれの構成主義的な面に着目する。