西洋思想で感性というとき、刺激を受容する感官による経験的な感覚所与の直感をさす場合がある。それは悟性や理性や知性とは峻別された低次の認識能力のことをいう。この意味での感性であれば、外部状態や内部状態のデータを取得するセンサーをそなえた機械ならこれをもつといってもおかしくなさそうである。しかし、日常的に感性というとき、それは必ずしも低次の認識能力ということでは汲み尽くしえない美のセンス、知性的な直観や倫理的な実践にさえ通ずる意味合いを多分に含みうるものである。この意味での感性は、機械と人間の異同を考察するにあたり一つの重要な鍵となるであろう。本発表では基礎情報学の立場から感性について試論する。