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ラディカル構成主義

知識とは何でしょうか? 知るというのはどういう行為でしょうか? 知識がどのように成立しているのかを問うことなしには情報学はありえません。ところで、知るという行為について合理的なモデルをつくるために、唯一絶対の客観的な現実というものの存在を前提にする必要はあるでしょうか? 知識とは、客観的現実を何らかの仕方で多かれ少なかれ精確に反映した写像としての表象のことなのでしょうか? そうではない、と考えた一人に、ラディカル構成主義を提唱したエルンスト・フォン・グレーザーズフェルドがいます。合理的に考えるなら、知る行為は、認知する主体から独立した客観的現実なるものに依拠することなしにモデル化すべきであるし、そうできるということを、グレーザーズフェルドは理論化してみせました。知るという行為を、何か小包のような客観的な実体として想定された知識を外部から入力して獲得することと定義するのではなく、自分の経験的世界のなかでうまくやっていける自分なりの行動や思考の仕方を自分で構成して適応することと定義したのです。そうすれば、客観的現実について言及しなくても、学習やコミュニケーションの過程を合理的にモデル化することができるというわけです。経験的世界の外部を参照しない情報的閉鎖系の自己産出的な学習やコミュニケーションを理論化するネオ・サイバネティクス/基礎情報学にとって、ラディカル構成主義はその基礎的なモデルを提供してくれる重要な研究のひとつです。

原島大輔 2016/9/7